5回シリーズ「人材活用について」の2回目「DX人材の不足」についてお届けします。
2.DX人材の不足
「いいデジタル人材が採用できない」「優秀な人材ほど、辞めてしまう」
こんなお悩みはどの企業にもあるのではないでしょうか?
その理由は、いろいろあると思いますが、
①イノベーションのスピードが速い
②「学べない企業」からの離脱
等が、あげられます。
①イノベーションのスピードが速い
1990年代後半から一般的になったインターネット接続は、今や常時接続が当たり前になりました。世界で約85億弱の契約があるといわれるスマートフォンやIoT(モノのインターネット)から、日々、膨大なデータが発生しています。IDCの調査(※1)によれば、全世界で発生するデータの量は、2025年には2016年の約10倍の163ゼタバイト(163兆ギガバイト)と予想されています。これらのデータは、AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)のさらなる進化を推進していきます。
最近話題のChatGPT(※2)という対話型AIをご存知でしょうか?これまでAIが、どちらかというと苦手だった人との対話、チャットが、とても自然な流れでできるようになっています。もはや、相手がAIなのか、人なのか、区別がつかないくらいです。AIの自然言語処理の進化もまた、ものすごいスピードだと感じます。
2000年代初頭には、モバイルで世界をリードしていたかに見えた日本。2022年のJETRO発表「世界デジタル競争力ランキング」(※3)では、日本はなんと29位に低下。もはやデジタル後進国となっている衝撃の結果です。
コロナでDXが推進されたとしても日本はこの状況。デジタル人材や、DX人材の育成についても急務です。
デジタル先進国、アメリカでは人材の争奪戦も激しく、会社側は新しいスキルセットが必要になった時、外から採用するよりも、まずは社内で人材がいないかを探すケースが増えているようです。「たとえ100%のスキルがなくても、7割くらいのスキルがあれば、学びによって3割を埋めよう」と考えるようになってきています。 人材を雇用する場合でも「必要なスキルを100%持っていなくても、企業風土が合うようならば採用して、社員教育、研修によってポストにふさわしい人を育てる」という発想に変化しつつあるようです。
これって、従来の日本企業の人材への考え方に戻ってきているかもしれないですね。
※1 調査会社IDC Japanの予測 2017年11月14日発表
※2 ChatGPT🔗 OpenAIが2022年11月に公開したチャットボット
※3 JETRO 世界デジタル競争力ランキング 2022年10月7日🔗
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界デジタル競争力ランキング2022(2022年9月28日)」に基づくもの。本ランキングは、63カ国・地域を対象に、デジタル技術の利活用能力を(1)知識(Knowledge)、(2)技術(Technology)、(3)未来への対応(Future Readiness)から評価。
②優秀な社員の辞める理由「この会社では学べない」
優秀な人の離職理由は、「この会社では学べない」「学んだことを活かすことができない」ということなのだそうです。
向上心があり、仕事ができる人であるほど、決断力も早く「ここにいても成長できないな」と感じるとすぐに転職してしまうようです。
Z世代、ミレニアル世代(※4)等、デジタルネイティブは、情報量も多いですし、社会貢献意識も高いと思います。また、優秀な人は、自らの職場環境を客観的に評価したり分析したりする力も持っています。
さきほどの「世界デジタル競争力ランキング」においても、総合ランキング1位のデンマークは、(1)知識の「社員研修」(2)技術の「テクノロジーの発展と応用」など計8つの小項目が63カ国・地域で1位となっており、デジタルにおいて社員研修の重要性がここでも現れています。
企業にとって、DX人材の不足を補う意味でも、また優秀な人材を繋ぎ留めておく意味でも、社員教育や人材育成に注力する必要性が高まっているのです。
※4 Z世代、ミレニアル世代
-ミレニアル世代:1981年~1996年に生まれ、インターネットなどのデジタルテクノロジーの発展とともに成長した世代
-Z世代(ジェネレーションZ:1996年〜2015年に生まれた世代(ミレニアル世代)の次の世代。日本においては、令和のスタートとともに社会人になった世代
次回から、
3.人的資本の情報開示の義務化
4.人的資本ISO30414とは
5. 人的資本の活用、情報開示対策として欠かせないもの
等、差し迫った課題とその対策について配信します。
この記事の筆者
教育プラットフォーム戦略室長 杉 眞里子
旅行会社、大手生命保険会社を経て、NTTドコモ、 日本IBMで数多くの政府政策系実証実験や官民をつなぐプロジェクトを経験。昨年12月、ジンジャーアップに入社。